• 切削研削油剤って何?

    切削研削作業に使用する潤滑剤のことです。

    切削研削油剤は主に金属や樹脂等の素材を加工する際に使用される潤滑剤です。加工時に油剤を使用することで潤滑効果や冷却効果が高まり、要求される形状や寸法に仕上げることができます。

    工具と被削材(ワーク)が接する個所(加工点)に対し切削油剤を供給することで工具寿命や仕上がりが良くなる。

  • 切削研削油剤はなぜ使われる?

    切削研削油剤には主に以下3つの役割があります。

    潤滑

    切削研削加工では、ワークは工具先端との接触により切断されます。 また、加工点では工具とワーク、工具と切屑の摩擦が発生します。加工点に油剤を供給することにより、これらの摩擦を低減させます。

    冷却

    金属を切削したときに発生するエネルギ-のほとんどは熱に変換されますが、この発生する熱をコントロールしないとワークに熱が蓄積され、形状・精度のコントロールが困難になります。
    また、工具も加工温度の上昇に伴って摩耗し易くなります。

    切屑除去

    切削研削加工で生じる切屑・粉・砥粒は、加工点に堆積すると加工の障害になり、工具の破損やワークに傷を生じる問題を起こすので、すばやく除去する必要があります。
    また、長い切屑は工具に絡み付くため作業性の面で危険です。

  • 切削加工とは?

    代表的には以下の加工を指しています。

    旋削加工

    被削材(ワーク)が回転し、棒状の工具(バイト)が回転軸に対して平行、または垂直に移動して切削します。
    旋削の切削加工に占める割合は極めて大きく、穴あけと並んで切削加工を代表する加工方法です。

    フライス加工

    旋削加工が主として材料を丸く削ることに対し、フライス加工は平らな面を削り出す加工です。フェイスミルまたはエンドミルと呼ばれる工具を用いこれを回転させ、ワークを上下左右に移動させ加工を行います。

    穴あけ・穴仕上げ加工

    機械加工の中でも最も一般的な加工であり、ドリルと呼ばれる工具で行います。
    穴あけ加工であけられた穴は、一般的に表面粗さや寸法の精度が悪いため、穴あけ加工を下穴とし表面粗さや寸法を目的の精度内に仕上げる加工が穴仕上げ加工であり、リーマと呼ばれる工具で行います。

    ねじ切り加工

    円柱状のワークにねじ山を付ける(おねじ)、穴にねじ山を付ける(めねじ)加工。
    ねじには数多くの種類・形状があり、めねじ加工の多くはタップと呼ばれる工具で行われます。また、旋削の応用でバイトが用いられることもあります。

  • 研削加工とは?

    代表的には以下の加工を指しています。

    平面研削

    ワークを固定もしくは横移動、砥石を回転させ、研削を行います。

    円筒研削

    ワークを回転、砥石も回転・並行移動させ、研削を行います。

    内面研削

    円筒の内面を研削します。

    センタレス

    調整車を通してワークを回転させ、外周または内面を研削します。

  • 切削研削油剤にはどのような種類がある?

    代表的には以下の加工を指しています。

    不水溶性切削油剤

    鉱物油をベースにした油性の液体で、油剤は希釈せずにそのまま加工に使用します。
    内容成分は、鉱物油に各種添加剤をブレンドしています。

    水溶性切削油剤

    原液を、水で10〜50倍程度に希釈して使用するタイプ。
    従って、加工使用時にはベースが水となっています。

  • 水溶性切削油剤の種類と特徴は?

    代表的には以下の加工を指しています。

    エマルションタイプ
    希釈時外観 乳白色液体
    使用用途 主に切削加工
    成分 油性成分を界面活性剤を用いて乳化
    長所 高い潤滑性、防錆性がある
    短所 腐敗やべたつき、機械汚れが発生しやすい
    ソルブルタイプ
    希釈時外観 半透明〜透明液体
    使用用途 切削・研削加工
    成分 主に水溶性成分・界面活性剤等
    長所 耐腐敗性が高く、濃度維持性に優れる
    短所 設備や塗装への影響性が発生することも
    ソリューション(ケミカル)タイプ
    希釈時外観 透明液体
    使用用途 主に研削加工
    成分 水溶性成分のみ
    長所 消泡性に優れる
    短所 潤滑性が低い
  • 油剤に求められる性能は?

    一次性能
    加工性(潤滑性) 被削材を要求される形状や寸法に仕上げ、工具の摩耗を防ぐ。

    加工性が不足すると、以下のような問題が起こります。

    二次性能
    防錆性・非鉄金属防食性 ワーク材質(鉄・アルミ・銅等)や工作機械を腐食しない。
    液安定性 外的要因(希釈水・系外混入物等)により分離や析出物を発生しない。
    消泡性 油剤タンクから泡がこぼれない。
    防腐性 長期間の循環使用時、菌の増殖による性能劣化、臭気の発生を防ぐ。
    耐ゴム・樹脂・塗装 工作機械に使用されている各種材質(ゴム・樹脂・塗装)に与える影響が少ない。
    作業環境性 皮膚への刺激、臭気等、現場使用者が快適に使用できる。
    加工後のワークの洗浄のしやすさ、蓄積する残渣のべたつき等、作業効率に悪影響を与えない。
    なぜ防錆性が必要?

    工作機やワークには鉄が多く使用されています。
    水溶性切削油剤は水に希釈して使用するため使用液中に水を多く含むため防錆性能を持たせることで一時期間の発錆を防ぐことが求められます。
    ※長期保管時の防錆には専用の防錆油を使用します。

    なぜ防食性が必要?

    加工後のワークが腐食すると品質不良に繋がります。

    アルミ合金の腐食

    アルミはアルカリ性水溶液下では腐食され、灰色→黒色に変色します。
    腐食防止にはpHや防食成分が影響します。

    アルミ合金の腐食比較
    銅合金の腐食

    アミン成分と化学反応を起こし、緑青(ろくしょう)を生成。
    また銅イオンが液中に溶出し液が青色に変色します。

    銅の腐食比較、銅イオン溶出比較
    なぜ液安定性が必要?

    油剤本来の性能が維持できなくなります。

    液安定性が損なわれる要因は?

    切削油剤は加工する材質の金属成分(鋳物:鉄イオン、アルミ・Mg:マグネシウムイオン、銅:銅イオン)によって成分が不安定になり、使用液の変色や析出物の発生を引き起こす場合があります。

    極度に状態が悪くなると液分離を発生し、油剤本来の状態・機能を維持できなくなります。

    加工する材質の影響だけではなく、希釈する水の影響(硬水)や対象ワークに付着した防錆油等の外部混入物に影響を受ける場合があります。

    液が分離し浮上物が発生
    なぜ消泡性が必要?

    切削油剤は設備内で循環して使用するため、循環速度や流量が多く泡が消えきれないとタンク内からあふれてしまいます(オーバーフロー)。油剤によって泡立ちやすい、泡立ちにくいものがあり、混入油等外部要因によっても泡立ちが多くなる場合があります。

    なぜ防腐・防カビ性が必要?

    腐敗が進むと異臭が発生し、油剤成分が分解されることで様々な性能低下を引き起こします。また、カビが発生するとタンク内に付着し機械停止の原因になります。

    菌の混入源 水道水、油剤成分、混入油、ホコリ、頭髪や皮膚 など
    菌の増殖要素 栄養源(有機成分・無機成分)、適度な温度(25〜35°C程度)、酸素の有無
    ※一定濃度・pH以上であれば効果があるので濃度・pH維持が重要となる。
  • 切削油剤の使用にあたり重要なことは?

    適切な更新・管理を行うことです。更新直後のクリーンな液は、適切な更新・管理を行うことで良い状態を長く維持することができます。適切な更新・管理ができていないと性能低下により様々なトラブルを起こすことになります。

    主なトラブルとしては、

    • 加工不良・腐敗(異臭)・発錆・アルミ変色・発泡・べたつき
    • 乳化不良(液分離)・固形物、浮上物 など
  • よくあるトラブルとその原因は?

    性能低下 影響因子 外部要因
    腐敗・異臭 微生物、油性成分、酸素、適度な気温
    マグネシウムイオン、カルシウムイオン
    防腐成分の濃度低下
    前油の残存、切屑の堆積
    希釈水の影響、作動油・摺動面油の混入
    気温・季節の影響、液循環、濃度あわせ作業
    加工不良 潤滑成分の濃度低下 濃度あわせ作業
    腐敗
    発錆 塩素イオン・硫酸イオン
    マグネシウムイオン、カルシウムイオン
    熱・湿度、酸素
    防錆成分の濃度低下
    切屑の堆積、希釈水の影響
    気温・季節の影響、液循環
    濃度あわせ作業
    腐敗
    液分離 マグネシウムイオン、カルシウムイオン
    油性成分、熱
    乳化成分の濃度低下
    前油の残存、希釈水の影響
    作動油・摺動面油の混入、季節・気温の影響
    濃度あわせ作業
    腐敗
  • 切削油剤の現場管理で実施すべきことは?

    液更新

    油種の選定、希釈水性状の確認、前油の抜き取り、新液の建浴、立ち上げ時の確認

    お客様サイドでの液管理

    屈折計を用いた定期的な濃度の確認、補給量チェックシートの確認、pHの測定

    使用液性状の確認

    濃度、pH、菌数

    防腐対策

    腐敗のメカニズム、防腐対策

    その他

    混入油の除去(作動油補給量の定期的な確認、オイルスキマー等による浮上油の早期除去)
    原液の保管場所、ロットの読み方、取扱い時の注意点(取扱説明書・SDS・保護具の着用)

  • 腐敗が起こるメカニズムは?

    菌の混入源

    殺菌・滅菌した水でない限り、水には菌が含まれています。
    また、ホコリや頭髪等、循環使用中に様々な経路から菌は混入します。

    菌の増殖条件 – 栄養源と適度な温度 –
    栄養源 有機成分(油性成分やアミンなどの窒素化合物)
    無機成分(マグネシウムイオン、カルシウムイオン、リン、硫黄など)
    適度な温度 30°C付近
    酸素の有無 菌による(好気性菌と嫌気性菌の存在)
    菌の抑制条件
    pH 中性領域を外し、酸性もしくはアルカリ性にする
    温度 30°C付近を外し、極端に暑くもしくは寒くする →非現実的な条件
    栄養源がない 有機・無機のいずれかのシャットダウン →非現実的な条件
    酸素の有無 偏性嫌気性菌に有効だが、好気性菌・通性嫌気性菌には逆効果
    殺菌剤の添加  

    水溶性油剤の長期循環使用は、微生物が増殖しやすい環境と言えます。

    • 新液(pH9.0以上)

      混入油・油剤成分・硬度成分・適度な温度 →栄養源
      液循環による酸素供給 →好気性菌に好適な環境に

    • pHが徐々に低下(pH8.5〜9.0)

      菌の活動によりアルカリ成分分解 →pH低下・好適な環境に
      菌の活動により酸性物質放出 →pH低下・好適な環境に

    • pHが大きく低下(pH8.0〜8.5)

      菌の活動により液中の溶存酸素濃度が低下 →偏性嫌気性菌に好適な環境に
      切屑の堆積 →偏性嫌気性菌に好適な環境に

    • 腐敗(pH8.0以下)
  • 防腐対策で注意すべき点は?

      施策 期待できる効果・備考等
    油剤の選定 防腐性に優れる油剤の使用
    エマルションのソルブル化
    栄養源の除去
    液更新時

    前油の徹底的な除去

    菌・栄養源の除去
    油状物・切屑の除去 栄養源の除去
    防腐剤による殺菌  
    汚染物の除去 オイルスキマーの設置 栄養源の除去
    フィルターの設置 切屑の除去
    切屑の定期的な掃除 切屑の除去
    液管理 定期的な濃度測定 異変のチェック
    pHの測定 腐敗進行度合いの確認
    休み前の殺菌 防腐剤の添加 偏性嫌気性菌の殺菌

    液管理や設備の状況によって期間は異なりますが、適切な液管理を行い、液を清浄にする設備(オイルスキマー・フィルター・切粉回収装置等)を設置することで、液更新までの期間を延長させることが可能です。

  • 液更新の目安は?

    以下のような現象が発生し、定期補給では改善されない場合

    項目

    原因

    加工性低下 加工不良
    工具寿命低下
    腐敗・混入油・硬度成分による液バランスの崩壊
    防錆性低下 発錆・変色 腐敗・硬度成分によるph・アルカリ濃度の低下
    塩素イオン・硫酸イオンの濃縮
    作業環境悪化 腐敗臭
    べたつき
    液変色
    腐敗・混入油・硬度成分による液バランスの崩壊
    鉄イオンの溶出(切粉の堆積)

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