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油剤に求められる性能は?
- 一次性能
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加工性(潤滑性) 被削材を要求される形状や寸法に仕上げ、工具の摩耗を防ぐ。 加工性が不足すると、以下のような問題が起こります。
- 二次性能
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防錆性・非鉄金属防食性 ワーク材質(鉄・アルミ・銅等)や工作機械を腐食しない。 液安定性 外的要因(希釈水・系外混入物等)により分離や析出物を発生しない。 消泡性 油剤タンクから泡がこぼれない。 防腐性 長期間の循環使用時、菌の増殖による性能劣化、臭気の発生を防ぐ。 耐ゴム・樹脂・塗装 工作機械に使用されている各種材質(ゴム・樹脂・塗装)に与える影響が少ない。 作業環境性 皮膚への刺激、臭気等、現場使用者が快適に使用できる。
加工後のワークの洗浄のしやすさ、蓄積する残渣のべたつき等、作業効率に悪影響を与えない。- なぜ防錆性が必要?
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工作機やワークには鉄が多く使用されています。
水溶性切削油剤は水に希釈して使用するため使用液中に水を多く含むため防錆性能を持たせることで一時期間の発錆を防ぐことが求められます。
※長期保管時の防錆には専用の防錆油を使用します。 - なぜ防食性が必要?
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加工後のワークが腐食すると品質不良に繋がります。
- アルミ合金の腐食
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アルミはアルカリ性水溶液下では腐食され、灰色→黒色に変色します。
腐食防止にはpHや防食成分が影響します。アルミ合金の腐食比較
- 銅合金の腐食
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アミン成分と化学反応を起こし、緑青(ろくしょう)を生成。
また銅イオンが液中に溶出し液が青色に変色します。銅の腐食比較、銅イオン溶出比較
- なぜ液安定性が必要?
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油剤本来の性能が維持できなくなります。
- 液安定性が損なわれる要因は?
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切削油剤は加工する材質の金属成分(鋳物:鉄イオン、アルミ・Mg:マグネシウムイオン、銅:銅イオン)によって成分が不安定になり、使用液の変色や析出物の発生を引き起こす場合があります。
極度に状態が悪くなると液分離を発生し、油剤本来の状態・機能を維持できなくなります。
加工する材質の影響だけではなく、希釈する水の影響(硬水)や対象ワークに付着した防錆油等の外部混入物に影響を受ける場合があります。
液が分離し浮上物が発生
- なぜ消泡性が必要?
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切削油剤は設備内で循環して使用するため、循環速度や流量が多く泡が消えきれないとタンク内からあふれてしまいます(オーバーフロー)。油剤によって泡立ちやすい、泡立ちにくいものがあり、混入油等外部要因によっても泡立ちが多くなる場合があります。
- なぜ防腐・防カビ性が必要?
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腐敗が進むと異臭が発生し、油剤成分が分解されることで様々な性能低下を引き起こします。また、カビが発生するとタンク内に付着し機械停止の原因になります。
菌の混入源 水道水、油剤成分、混入油、ホコリ、頭髪や皮膚 など 菌の増殖要素 栄養源(有機成分・無機成分)、適度な温度(25〜35°C程度)、酸素の有無
※一定濃度・pH以上であれば効果があるので濃度・pH維持が重要となる。